スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【毎日新聞】クローズアップ2010:政教分離・最高裁判決 “違憲神社”1000件以上

http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20100121ddn003040028000c.html

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 ◇撤去判断は差し戻し、円満解決促す
 北海道砂川市の神社を巡る訴訟で最高裁大法廷は20日、市有地を無償提供している市の行為を違憲と判断し、「政」と「教」のあいまいなかかわり合いに警鐘を鳴らした。明治初期以降、国や自治体の所有地が多くの社寺に無償提供され、現在でも公有地に神社が建つケースは多い。今回の判決で直ちにそれらが違憲状態となるわけではないが、国や自治体は早急な対応を迫られることになりそうだ。【銭場裕司、伊藤一郎、北村和巳】

 公有地に建つ神社の正確なデータはないが、原告側は「少なくとも全国に1000件以上」、砂川市は「数千単位にとどまらない」と指摘する。神官が常駐せず建物だけだったり、ほこらだけの神社は各地にあるとみられる。神社は宗教性を持つ一方、地域の生活に密着した習俗の場所でもあり、こうした状態は放置されてきた。

 問題になった空知太(そらちぶと)神社も、建物は地元町内会の所有で、宗教法人格はなく、神官も非常駐だ。明治期に住民がほこらを建てたのが起源で、70年に現在地に移転された。建物は町内会館でもあり、敷地の大半は、住民が砂川市の前身の砂川町に寄付した。

 市は建物が習い事や老人クラブの親睦(しんぼく)に多く利用されている実態などから「神社らしき外形があるに過ぎず、神社と呼ばれる施設の中でも宗教的色彩が最も乏しい」と主張した。

 これに対し大法廷は、並んだ二つの入り口に「空知太会館」「神社」と掲示され、鳥居や神社を象徴する地神宮があるといった施設の外形や、そこで行われる祭事から「明らかに神道の神社施設」とし、市の行為を特定の宗教に対する便宜供与と認定した。

 各地の神社については「施設の性格や敷地提供の経緯、利用形態などはさまざま」と指摘しているが、小規模なものでも政教分離に反すると判断される可能性をうかがわせる。

 市有地に七つの神社がある北海道苫小牧市の担当者は「判決内容を詳細に検討し、何らかの対応を考えたい」と話した。神社本庁の小間沢肇渉外部長は「歴史的かつ現実の国民生活の実情を無視するもので、無用な混乱を招くことが懸念される」とコメントした。

 関東大震災と東京大空襲の被災者を仏式で慰霊する東京都慰霊堂(墨田区)も都有地に建つ。しかし都公園課は「慰霊堂は公園施設で、大正時代にコンペで設計を採用し浄財で建設した。仏式の施設という認識はなく、法要も公園を管理する財団法人の主催」として問題はないとの認識を示す。

 一方、判決は神社施設の撤去はすぐに求めなかった。信仰の対象とする人々の「信教の自由」を侵すおそれがあるからだ。今回の問題を研究する長崎総合科学大の佐藤雄一郎専任講師(憲法)も、09年3月発表の論文で同様の指摘をしており、「問題は土地の無償提供。存在する神社をなくせとまで言えない」と判決を支持する。

 大法廷は結論を差し戻し審に委ねつつ、土地の譲渡や貸し付けなどの手法を挙げ、当事者に円満解決を促したとも言える。同時に判決した「富平神社」を巡る訴訟では、違憲状態を解消するため砂川市がとった「土地の無償譲渡」を合憲と判断した。ただし、もともと地元住民が寄付した土地だったことを重視しており、他のケースでも許されるかどうかかは不透明だ。

 北海道旭川市は今回の訴訟の1審判決を受けた調査で、市有地に四つの神社があり、うち三つに土地を無償提供していたことを把握した。神官が常駐せず、地域住民が管理している形態は空知太神社と同じだ。市は06〜07年に地元住民と協議し▽神社を隣の民有地に移転する▽地元が市有地を買い取る▽地元と賃貸借契約を交わす−ことで「違憲状態」を改善している。

 ◇「政教近接」に警鐘
 政教分離は国家神道が戦前、政治に密接にかかわったことを反省して憲法に盛り込まれた。最高裁は、初めて違憲と判断した「愛媛玉ぐし料訴訟」以外では政教分離を緩やかにとらえてきたが、今回は改めて「政教近接」に警鐘を鳴らした。

 過去の訴訟で判断の「物差し」とされたのは、市立体育館の起工式を神式で行ったことの妥当性が争われた津地鎮祭訴訟の最高裁判決が示した「目的・効果基準」だ。国家と宗教の完全な分離は不可能との立場から、違憲となる宗教的活動を「目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教に対する援助・助長・促進・圧迫などになる行為」と限定的にとらえ、判例として確立した。

 しかし、どのような行為がこれに当たるかは裁判所によって判断が分かれた。山口県護国神社への自衛官合祀(ごうし)を巡る訴訟は1、2審の違憲判断が、最高裁で合憲になった。一方、靖国神社の玉ぐし料などを県費で払うことの是非が争われた愛媛玉ぐし料訴訟では、1審違憲、2審合憲と変転し、最高裁で再び違憲判断された。基準のあいまいさがそのたびに指摘されてきた。

 今回の判決は目的・効果基準ではなく、「宗教施設の性格、無償提供の経緯や態様、これに対する一般人の評価など諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合判断すべきだ」との新しい「物差し」を示して判断した。

 ただし、従来の基準に取って代わったとは言えない。ある民事裁判官は「土地提供のような継続的行為が問題になる場合、どの時点について『目的』『効果』を考慮すればいいかは不明確。このため、問題に即した新しい基準を示したのでは」と分析する。実際に判決文に目的・効果基準への言及はなく、否定したのではないとみられる。

 今後も個々の政教分離を巡る争いは、事案ごとの事情によって判断されることになる。「物差し」の明確化は今後の課題として残っている。

==============

 ◆空知太神社訴訟の最高裁裁判官14人の憲法判断◆

◎竹崎博允 (裁判官)×

 藤田宙靖 (学者) ×

 甲斐中辰夫(検察官)△

 今井功  (裁判官)×

 中川了滋 (弁護士)△

 堀籠幸男 (裁判官)○

 古田佑紀 (検察官)△

 那須弘平 (弁護士)×

 田原睦夫 (弁護士)×

 近藤崇晴 (裁判官)×

宮川光治 (弁護士)×

 桜井龍子 (行政官)×

 竹内行夫 (行政官)△

 金築誠志 (裁判官)×

 注)かっこ内は出身。◎は裁判長。○=合憲、×=違憲、△=判断せず。今井裁判官は違憲判断だが、上告棄却を主張。12月死去の涌井紀夫裁判官は審理に不参加

==============

 ◆政教分離を巡る主な最高裁判決◆

 (☆は大法廷判決)

77年 7月 津地鎮祭訴訟☆                                      合憲

88年 6月 殉職自衛官合祀訴訟☆                                   合憲

92年11月 大阪地蔵像訴訟                                      合憲

93年 2月 箕面忠魂碑・慰霊祭訴訟                                  合憲

97年 4月 愛媛玉ぐし料訴訟☆                                    違憲

99年10月 箕面遺族会補助金訴訟                                   合憲

02年 7月 天皇即位の関連儀式・主基斎田抜穂(すきさいでんぬきほ)の儀への大分県知事の参列を巡る訴訟 合憲

 〃     大嘗祭(だいじょうさい)への鹿児島県知事の参列を巡る訴訟                 合憲

04年 6月 即位礼正殿の儀への神奈川県知事らの参列を巡る訴訟                     合憲

毎日新聞 2010年1月21日 大阪朝刊
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。